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第38話 静かな子は、やさしくされた分だけ逃げ場をなくしていく

last update publish date: 2026-09-12 19:00:38

倉科紬希は、自分が“やさしさ”に弱い方だと、最近ようやく自覚し始めていた。

 昔からそうだったのかもしれない。

 ただ、今まではそこまで強く意識したことがなかっただけで。

 派手な言葉に弱いわけではない。

 分かりやすく褒められることにも、そこまで慣れていない。

 むしろ急に強い好意を向けられると、一歩引いてしまう方だ。

 でも、さりげないやさしさには弱い。

 困っている時に、無理に踏み込まず気づいてくれる。

 自分が言葉を探している間、急かさず待ってくれる。

 少しだけ揺れている時に、そこを責めずに整えてくれる。

 そういう、目立たないのにちゃんと残るやさしさ。

 たぶん、自分はそういうものに弱い。

 そして今、久瀬湊人はまさにその種類のやさしさを持っている。

 だから困る。

 かなり困る。

 しかも、そのやさしさの方向が、夜の推し――天瀬アルトへ感じてきたものと少し
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